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スパコン電力消費

スパコンの維持費についての話があった。スパコンの維持費はほとんど電気代である。富岳は 20 MW から 30 MW 消費する [1] ようで、原発一基の X% 消費するみたいな表現をするのだという。実際に原発の電力を調べてみると 500 MW から 1 GW 程度らしい [2,3] ので 2-3% に過ぎない。そこまでではない。一方でスパコンは基本的には 24 時間 365 日動かすのが普通である。色々な人が断続的に大きなジョブを投げるので、夜は営業しないだとか土日は営業しないだとかいうことはできない。そうすると電気代が物凄いことになる。20 MW だと一時間に 60 万円で一日で 1440 万円である。一年続けると 52 億円かかる。富岳に隣接してガスタービン発電機もあるらしいがそれでは到底賄えないそうだ (緊急用だろうか)。

水力発電は 10 MW から 100 MW まで幅が広い [4]。最近は 1 MW 程度の小水力発電をたくさん作るというのが趨勢らしい。ダム水路式という方式は原発一基に匹敵する 1 GW の出力を持っている [4] が、これらは揚水式発電だそうで、電力を作り出している訳ではないということと長時間持続できるものではないだろうということに注意する。

一方で加速器の消費電力はどの程度だろう。BNL AGS は 70 MW で CERN SPS は 150 MW で J-PARC は 100 MW という資料があった [5,6]。LHC は Web 上で探してみると 120 MW, 180 MW, 200 MW, 230 MW など様々な数値が見つかる [7-9]。RHIC は冷却に 5 MW [13,14]、計算機システムに 4.5 MW [15,16]、20-30 MW という情報 [17] もある。スパコンよりも加速器の方が断然電力を食う。一方で加速器は年がら年中動かしている訳ではない。様々な設定で実験するために毎回止めて整備をするし、そもそも予算の都合で動かす期間を調整している。というか話が逆で、予算が先にあってそれが動かす期間を決める。

東海道新幹線は一編成の理論最大出力は 17 MW (N700) らしい [10]。500系は 18 MW 程度 [11]。つまり富岳は新幹線1編成の最大出力と大体同程度ということになる。しかし実際には常に最大出力で走っている訳ではない。東京大阪間 2時間24分 で 10 MWh 消費するらしい。平均で 4 MW なので新幹線5編成の平均消費電力が富岳と同程度である。JR東海の営業時の電車全体の電力消費は 200-400 MW 程度のようである。新幹線のエネルギー消費はやはり空気抵抗が一番大きいのだろうか。調べると 500 系が最も効率が良かったのだろうか [12] (でもこの記事は怪しい)。

(2023-11-25 追記) 旅客機のエネルギー消費も気になる。文献 [18] によると旅客機は 3000-9000 L/h の灯油を消費する (これが平均なのか最大なのかなどの詳細は不明である)。文献 [19] などによると灯油は 36.7 MJ/L だそうだ。灯油を仮に効率100%で電力に変換できたとすると、30-90 MW と同等の消費ということになる。ジェットエンジンはどうだろう。文献 [20] によると離陸時 431 kN で、巡航時 TSFC = 13.5 g/kNs なので、灯油の密度 800 g/L と合わせて、単純計算で最大 267 MW になる。離陸時の効率は巡航時よりも悪いだろうから、実際はより大きいだろう。GE9X は XWB よりも 5% TSFC が良いが最大出力が 470 kN らしい [21] ので、277 MW になる。

最近は予算削減などで基研のスパコンもいつまで継続できるかわからないという話も聞く (実際はどうか分からない)。Yukawa-21 はどの程度の電力消費だろう。